非上場株式の評価方法が大きく変わる可能性

非上場株式の評価方法が大きく変わる可能性!相続税・事業承継への影響を税理士が解説

目次

はじめに

中小企業の経営者にとって、今後の事業承継を考えるうえで重要な動きが出ています。

国税庁は2026年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、非上場株式の相続税評価方法について抜本的な見直しを検討しています。

今回の見直しでは、従来の会社規模に応じた評価方式を廃止し、企業の純資産と収益力を基礎とする新しい評価方式に一本化する方向が示されています。

この改正が実現すれば、会社によっては自社株の評価額が大きく上昇し、経営者の相続税負担が増える可能性があります。

一方で、評価額が下がる会社も考えられます。

今回は、現在検討されている改正内容と、中小企業の経営者や後継者に与える影響について解説します。

※本記事は2026年11月6日現在の公表資料に基づいています。見直しの内容や適用時期は未確定です。

1.現在の非上場株式の評価方法

現在、非上場株式の相続税評価では、原則として会社の規模に応じて評価方法が異なります。

① 大会社:類似業種比準方式

上場会社の株価を参考に、配当金額、利益金額、純資産価額を比較して評価する方法です。

② 中会社:併用方式

類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせて評価する方法です。

③ 小会社:純資産価額方式

会社の資産と負債を原則として相続税評価額に置き換えて、自社株の価額を算定する方法です。

現行制度では、同じような財務内容の会社であっても、会社規模や適用される評価方式によって株式評価額に大きな差が生じる場合があります。

2.なぜ評価方法を変更するのか

今回の見直しの背景には、会計検査院による指摘があります。

国税庁が公表した資料によると、令和4年分および令和5年分の相続税・贈与税申告から抽出した700社について、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の約26.1%でした。

つまり、類似業種比準方式では、純資産価額方式と比較して相当に低い評価額となる傾向が確認されたのです。

こうした評価方式間の差が、会社規模による税負担の不公平や、株式評価額を意図的に引き下げる対策につながる可能性が問題視されています。

そのため、会社規模に左右されにくく、企業の実態を反映した評価方法への見直しが検討されています。

3.新しい「残余利益方式」とは

現在、国税庁が検討しているのが「残余利益方式」です。

これは、会社の簿価純資産を基礎とし、通常期待される利益を超える収益力を加減算して株式価額を算定する考え方です。

基本的なイメージは次のとおりです。

株式評価額=簿価純資産価額+将来の超過収益力を反映した価額

例えば、会社の簿価純資産が3億円であっても、その会社が高い収益力を持っていれば、その収益力を反映して株式評価額が高くなる可能性があります。

反対に、会社の収益力が低ければ、評価額が抑えられる可能性もあります。

検討案では、過去の法人税申告書等の情報を活用し、過去の正常利益を基礎として、おおむね5年間の超過収益を評価に反映することが議論されています。

ただし、具体的な還元率や調整率などはまだ確定しておらず、最終的な計算方法は今後の検討に委ねられています。

4.どのような会社に影響があるのか

① 利益を継続的に計上している優良企業

特に注意したいのが、長年にわたって安定した利益を計上している会社です。

これまでは類似業種比準方式によって比較的低い株価となっていた会社でも、新方式では収益力が評価額に反映され、株価が上昇する可能性があります。

経営状態が良好であるほど、相続税評価額が高くなるケースも考えられます。

② 内部留保が多い会社

長期間にわたって利益を蓄積してきた会社も、影響を確認する必要があります。

新方式では簿価純資産が評価の基礎となるため、蓄積された利益剰余金が株式評価に反映されます。

ただし、現行の純資産価額方式でも内部留保は評価に反映されているため、内部留保が多いという理由だけで必ず評価額が上がるわけではありません。

③ 規模の小さい会社や収益力の低い会社

一方、現在の純資産価額方式で評価している小会社などでは、新方式によって評価額が下がる可能性もあります。

資産の含み益や収益力の状況によって、影響は異なります。

したがって、今回の改正を単純な増税と考えることは適切ではありません。

会社ごとに、現行方式と新方式による評価額を比較することが重要です。

5.相続税への影響はどれくらいか

例えば、ある経営者が保有する非上場株式について、次のような評価額の変化が生じたと仮定します。

  • 現在の株式評価額:1億円
  • 見直し後の株式評価額:2億円
  • 評価額の増加:1億円

この場合、相続財産に算入される株式の価額が1億円増加することになります。

相続税額は、法定相続人の人数や他の相続財産、各種特例の適用状況によって異なりますが、株式評価額の上昇に伴って相続税負担が大幅に増加する可能性があります。

しかも、非上場株式は上場株式と異なり、容易に売却して現金化できるとは限りません。

会社の業績が良くても、後継者が相続税を納めるための現金を十分に保有しているとは限らないのです。

これは事業承継における大きな問題です。

なお、上記の金額は改正による影響を説明するための仮定であり、実際の評価額の上昇を予測したものではありません。

6.生前贈与や事業承継への影響

自社株の評価額が上昇すると、相続だけでなく、生前贈与にも影響します。

例えば、現在は比較的低い評価額で後継者へ株式を贈与できる会社でも、将来の評価方法の変更によって贈与税の負担が増加する可能性があります。

また、相続時精算課税制度を利用した株式の移転についても、贈与時の評価額が重要になります。

ただし、税負担を抑えることだけを目的に、急いで株式を贈与することは勧められません。

後継者の経営能力、株式の議決権、親族間の関係、将来の経営方針なども考慮する必要があります。

また、法人版事業承継税制の適用が可能な会社では、相続税や贈与税の納税猶予・免除制度も含めた総合的な検討が必要です。

7.経営者が今から準備しておくべきこと

今回の評価方法の見直しを踏まえ、中小企業の経営者は次の事項を確認しておくとよいでしょう。

① 現在の自社株評価額を把握する

まず、現行制度による自社株の相続税評価額を確認することが重要です。

貸借対照表上の純資産額と、相続税評価額は必ずしも一致しません。

② 後継者への株式移転計画を確認する

事業承継を予定している場合には、株式移転の時期や方法を再検討する必要があります。

③ 相続税の納税資金を確認する

会社の株式を相続する後継者が、相続税を納付するための資金を確保できるかどうかも重要です。

④ 制度改正の動向を継続して確認する

新しい評価方法の内容、経過措置、適用開始時期などについて、今後の国税庁の公表資料を確認する必要があります。

8.改正はいつから始まるのか

国税庁は、2026年4月から有識者会議を開催しており、同年9月16日の第6回会議では、新しい評価方法による試算などが公表されました。

今後、令和9年度税制改正の議論や財産評価基本通達の見直しなどを通じて、具体的な制度設計が進められると考えられます。

令和10年(2028年)からの適用開始を目指す方向も示されていますが、現時点で確定したものではありません。

また、中小企業の事業承継に与える影響について、経済産業省・中小企業庁や日本商工会議所などから慎重な検討を求める意見も出ています。

今後、改正内容や実施時期が変更される可能性があります。

9.まとめ

今回検討されている非上場株式の評価方法の見直しは、中小企業の相続税対策や事業承継に大きな影響を与える可能性があります。

特に、長年にわたって安定した利益を計上している会社や、類似業種比準方式によって株式を評価している会社では、注意が必要です。

一方で、会社の財務内容や収益力によっては、評価額が下がる可能性もあります。

大切なのは、制度改正が確定する前から自社株の現状を把握し、将来の相続や事業承継について検討しておくことです。

自社株の価値を把握することは、円滑な事業承継への第一歩です。

当事務所では、非上場株式の評価、相続税対策、事業承継に関するご相談に対応しております。

自社株の評価額や後継者への株式移転についてお悩みの経営者の方は、お気軽にご相談ください。


参考資料

  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」
  • 国税庁「タックスアンサー No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「第6回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」配付資料(2026年9月16日)

※本記事は2026年11月6日時点の制度および検討状況に基づいて作成しています。実際の税務判断では、その時点の法令・通達等を確認してください。

この記事を書いた人

舩橋信治
昭和46年生まれ
保有資格 税理士、宅建士、行政書士、保険代理店
会計税務の仕事は24歳のときからたずさわっております。
でもまだまだわからないことが多いです。
初心貫徹、日々精進してまいります。

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