相続・贈与で注意!株の評価価格が上がるのはどんなとき?【税理士監修】
相続や贈与において「株式」は評価方法が複雑であり、税務上の課題も多く含まれます。特に「株の評価価格が思わぬタイミングで上昇してしまう」ケースは、納税額にも大きく影響を与えます。
今回は税理士の立場から、「どんな条件で株の評価額が上がるのか」について、具体的なポイントを解説します。
株の評価方法の基本(相続税評価)
非上場株式の場合、以下の3つの評価方法のいずれか、または組み合わせが用いられます。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
その中で、株価が上がる要因を整理してみましょう。
株の評価価格が上がる主な条件
1. 利益水準の向上
会社の直近の決算で利益が増加すると、類似業種比準方式での評価額が上昇します。特に以下の数値が評価に影響します。
- 売上高・経常利益
- 配当金額
- 純資産の増加
決算操作などがない限り、業績の改善は株価に直接反映されます。
2. 純資産の増加(含み資産の顕在化)
純資産価額方式では、会社が保有する不動産や株式、現預金などの時価ベースの資産が評価の対象になります。
- 不動産の値上がり
- 保有株式の評価額の上昇
- 繰延税金資産の増加
などによって、評価額が大きく上がる可能性があります。
3. 類似業種の株価上昇
類似業種比準方式では、上場している同業他社の株価が参考にされます。市場全体や同業界の好調により、基準株価が上がると、自社株の評価にも影響します。
4. 株主構成や議決権割合の変動
評価対象株式の**保有割合が高い(50%以上など)**場合、その分評価が高くなります。逆に少数株主であれば評価が割引されます。
また、少数株主から過半数株主に移行すると、評価額が大きく跳ね上がることもあるため注意が必要です。
5. 資産運用型の会社への転換
通常の事業会社から、資産管理会社(不動産賃貸や金融資産中心の会社)に変わった場合、純資産価額方式が採用されやすくなります。結果として株価が「資産価値ベースで上昇」しやすくなります。
対策は早期の評価・検討がカギ
株価の評価額が上がると、相続税・贈与税の負担が増えます。生前に株価の試算を行い、株価が上がる前に贈与を検討することも有効です。
税理士によるアドバイスを
株式評価は専門性が高く、税務調査でも重点的に確認される分野です。税理士による精緻なシミュレーションと計画的な対策が、節税と円滑な承継の鍵となります。
